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70年代のオメガをデザインした巨匠、

今は亡きアーティストジュエラーが個人的に所有していたブシュロンは、オメガとの“アバウトタイム”コレクションで彼が創作したいくつかのデザインに影響を与えたかもしれない。

最近、アンドリュー・グリマ(Andrew Grima)はデザイン志向の時計愛好家のなかで注目を集めている。70年代の時計にしか興味がない人でも、その名前を聞いたことがあるに違いない。アーティストとして時計界に貢献した彼の功績は、控えめに言っても異例なものであった。

イギリス王室やジャッキー・ケネディ(Jackie Kennedy)などをクライアントに持っていたロンドン在住のアーティストでありジュエラーであった彼は、1969年にオメガのためにひとつの時計シリーズを製作したことで時計愛好家のあいだでもよく知られている。アバウトタイムと名づけられたコレクションは、IWCスーパーコピー代引き保守的な外観を持つシーマスターやデ・ヴィルのなかにありつつ、非常に大胆なデザインで構成されていた。グリマは硬いグラフィックラインを持つ彫刻的な作品や、一定の形を持たない有機的なフォルムをつくり上げた。彼の曖昧な形と構造の対比は、ハイジュエリーやアートに近いものであり、それまでの時計デザインには見られなかったものであった。

Grima's personal Teak watch
アンドリュー・グリマの私物であったチークウォッチ。

数週間前、ロンドンにあるトマソギャラリーで開催されたグリマの回顧展を訪れた際、彼の時計デザインへの関心がまったく別のブランドから始まった可能性があることを知った。1969年に撮られた写真(のちにサインを入れ、娘のフランチェスカ氏に贈られた)には、彼がブシュロンのリフレと思われる時計をつけた姿が写っているのだ。彼は自身で時計をデザインするまで、毎日その時計をつけていたことを聞いた。

ブシュロン リフレは1947年に登場し、数十年間にわたりイエローゴールド、ローズゴールド、ホワイトゴールドなどで製作された。仕上げもクル・ド・パリ、バーティカルサテン、縦リブなどさまざまなものがあり(ヴィンテージのブシュロンについてはこちらをチェック)、ダイヤルの仕上げはケースとおおむね一致している。私たちが得た情報によれば、グリマのリフレはバーティカルサテンか縦リブ仕上げであり、インデックスはローマ数字かアプライドであった。

Boucheron Reflet
文字盤にサインが入ったブシュロン リフレ。Photo: courtesy of Alexandre Tritz

Boucheron Reflet
縦リブ仕上げのYG製リフレ。Photo: courtesy of Kevin O'Dell

アバウトタイムコレクションの一環として、グリマは自身の手首に合うような時計をデザインした。彼が個人的に所有していたオメガ チークウォッチについて、フランチェスカ氏は「生産モデルとは異なり、コレクションのなかで唯一、ダイヤルに父の名前とオメガのロゴが両方入っていた時計です」と説明した。「彼は1969年から毎日この時計を着用していました」

本モデルはグリマが持つブシュロンのスライディングメカニズムに似た、スライド式ラグを6時位置に備えているのが特徴で、明らかにその影響を受けている。また、アバウトタイムコレクションにもブシュロンの影響が見られる。例えば、グリマのサテン仕上げダイヤルやブシュロンらしい形状の針などだ。のちに古いブシュロンのカタログを見たとき、同様の影響が逆に働いていたことも間違いないと感じた。グリマのジュエリーを多用した時計の創作は、パリの高級ジュエリーブランドであるブシュロンの1970年代~80年代にかけて見られるジュエリーウォッチカタログに、多くのインスピレーションを与えたに違いない。

Boucheron Caree
サテン仕上げのホワイトゴールド製カレ。角ばったブシュロンの針、スライディング式ラグを備えている。

Grima Clasp on Teak watch
グリマのチークウォッチに搭載されたスライディングクラスプ。Image: courtesy of Bonhams

アンドリュー・グリマの作品はきわめて豪奢でありながら、どこか新鮮さを保っている。複雑なディテールや装飾はしばしば古風と見なされる一方で、シャープなラインやニュートラルな仕上げはより現代的な製品を連想させる。これは不思議な融合である。グリマの有機的に彫刻されたゴールドのチークケースが、ブシュロンにインスパイアされたクリーンなサテン仕上げのダイヤル(ニュートラル)と角ばった針(モダン)を包み込んでいるのだ。このデザインの組み合わせは、さらに調査する価値がある。どうぞご期待ください!