オメガ 熱烈なスピーディ愛好家を歓喜させる2本のモデルが新登場。
2016年のオークションシーズンでは、オメガスーパーコピー代引き優良サイト目を見張るような素晴らしい時計が数多く出品された。そのなかでも特に注目されたのは、フィリップスに出品されたステンレススティール(SS)製のパテック フィリップ Ref.1518だ。同オークションハウスはこれ以外にもティファニー・サイン入りのロレックス Ref.6263やカルティエ・サイン入りのパテック Ref.1463、その他のスティール製パテックや素晴らしいロレックスなど、超高級かつ華やかな時計を多数取り揃えていた。非常に見応えのあるカタログだ。しかしフィリップスのオークションリストを眺めたとき、個人的に最も印象に残ったのは、一般的にはすぐに注目されないかもしれない2本の時計だった。ただ信じて欲しい。これらは本当に素晴らしい時計であり、どちらもほぼ唯一無二といえる希少性を持ち、圧倒的な美的魅力を備えている。そして偶然にも、どちらもオメガなのだ。
オメガ スピードマスター プロフェッショナル アラスカプロジェクト プロトタイプ(NASAおよびオメガ・ミュージアムの旧所蔵品)
omega speedmaster alaska project nasa
これは、スピードマスター収集における“究極の1本”と言えるかもしれない。
以前にも話したが、私はスピードマスター プロフェッショナルを愛してやまない。そして素晴らしい点は、スピーディ(スピードマスターの愛称)が今でも約5000ドル(当時のレートで約57万5000円)で手に入るということだ。しかしもしスピーディに本気でのめり込みたいなら、さまざまなアプローチがある。実際、オリジナルのスピードマスターは5000ドルから15万ドル(当時のレートで約57万5000円〜172万5000円)という幅広い価格帯で入手可能だ(スピードマスターのバリエーションを完全網羅した歴史を知りたければ、こちらをクリック)。
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6桁ドルの価格帯に達するようなモデルとは、当然ながら初代シリーズのRef.2915だ。なかでも、オリジナルの状態を維持したRef.2915-1(初期のシリーズのなかでも最初のモデル)を見つけるのはほぼ不可能に近い。しかし、まれにそのような奇跡が起こることもある。フィリップスが今回出品する時計は、ミントコンディションのRef.2915-1よりもはるかに希少であり、そのクールさは規格外といえる。
zinc dial omega alaska project speedmaster
このダイヤルには、ホワイトのマット仕上げで酸化亜鉛コーティングが施されている。
alaska project speedmaster caseback
この時計は、Ref.146.022-69 をベースにしている。
この時計は、まさにプロトタイプなのだ。NASAはすでにスピードマスター プロフェッショナルを公式のスペースウォッチとして選定していたが(そして、それは見事なパフォーマンスを発揮した)、それでもオメガのエンジニアたちは、宇宙に特化した時計を開発することに執念を燃やしていた。フィリップスによればオメガは1969年の月面着陸成功以前から宇宙専用の時計の開発に着手し、驚異的なモデルを生み出していた。幸運なことに、私は2013年に“アラスカプロジェクト”の最初のモデルを目にする機会を得た。以下でその写真を見ることができる。この“アラスカプロジェクト”は、宇宙計画専用の特別な時計を開発するためのコードネームであり、実際には北米最北の州であるアラスカとは無関係だ。オメガが何を開発しているのかを極秘にするため、このような名称がつけられたに過ぎない。
original omega alaska project speedmaster
オリジナルのアラスカ プロジェクト プロトタイプはチタン製である。
この時計は1969年に製造されたチタン製ウォッチである。そう、ホワイトダイヤルと視認性を高めるための特別なインダイヤル針を備えたチタンの塊だ。この時計は“アラスカプロジェクト I”と呼ばれるもので、間違いなく最も希少なスピードマスターである。しかしながら一般にはほとんど知られていないモデルだ。そもそものアラスカプロジェクトは2年間の研究の末、1971年に中止された。その後1972年に“アラスカプロジェクト II”が始動し、下の画像のようにより市販モデルのスピードマスターに近いデザインが採用された。
alaska project speedmaster omega
この時計は特別なマット仕上げのスティールケースを採用している。
alaska project speedmaster omega
ベゼルも通常より厚く設計されており、風防を保護する役割を果たしている。
上記の時計は、2013年に見たアラスカプロジェクトのプロトタイプのなかでも特にお気に入りの1本だ。マット仕上げのスティールケースを採用し、風防を保護するための特別な隆起ベゼルが備えられている。
red aluminum case alaska project omega
鮮やかな赤いアルマイト加工のアルミニウム製ケースは、実は耐熱シールドである。
アラスカプロジェクト II の時計は実際に1972年にNASAの試験に提供されており、今回フィリップスが出品する時計もそのひとつだ。この時計はごく一般的なスピードマスター Ref.145.022-69 にCal.861を搭載したモデルであり、チタンやマットスティールのケース、隆起ベゼルは採用されていない。しかしながらマット仕上げの酸化亜鉛コーティングが施されたホワイトダイヤル、特別仕様の針、そして宇宙での使用を想定して開発された赤いアルミニウム製の耐熱シールドを備えている。この時計は長らくNASAの所有物であったが、プロジェクトの終了後にオメガへ返還された。そして、このモデルこそが、のちにオメガが復刻版“アラスカプロジェクト”シリーズを製作する際のベースとなったのだ。
alaska project omega wristshot
アラスカプロジェクトのプロトタイプは、従来のモデルと同じ42mm径のケースを採用している。
この特別な時計は現存する3本の“完全な”アラスカプロジェクト II のうちの1本であり、その来歴は疑う余地がない。オメガからNASAへ渡り、その後30年間オメガ・ミュージアムで保管されたのち、2007年のアンティコルム“オメガマニア”オークションに出品された。当時の落札価格は6万4000スイスフラン(当時のレートで約960万円)だった。
フィリップスはこのオメガ アラスカプロジェクトのプロトタイプに10万~20万スイスフラン(当時のレートで約980万~1960万円)のエスティメートを設定している。この時計は圧倒的な存在感を放ち、ホワイトダイヤルが際立つ美しいデザインを備えている。最近ではRef.2915が6桁ドルの価格を超えるのが当たり前になっていることを考えれば、この時計も十分に注目に値する。またスピードマスター愛好家にとって特に興味深いのは、短期間しか生産されなかった“220”ベゼルを備えている点だ。
このスピードマスター アラスカプロジェクト プロトタイプの詳細はこちらで確認できる。一般的なポール・ニューマン デイトナの価格で、真に特別な一本を手に入れることができるのだ。
ポーランドで発見された44mm径のセクターダイヤル Ref.CK2039
omega sector dial phillips 44mm
このセクターダイヤルのオメガは、44mmという圧倒的なサイズを誇る。
このオークションで出品されるもうひとつの素晴らしいオメガは、アラスカプロジェクトのスピーディとはまったく異なるタイプの時計だ。スピーディは20世紀後半の科学的革新と宇宙時代の楽観主義を象徴するモデルであり、実用性を重視し、努力を惜しまなかった“偉大なる世代”が築いた技術基盤と、その子どもたちが抱いた宇宙時代への野心が融合して生まれた時計である。一方このもうひとつの時計は、1939年というまったく異なる時代にヨーロッパで生まれた。それが、オメガ Ref.CK2039 だ。シンプルなカラトラバスタイルのスティールケースを備えたモデルだが、何よりも特筆すべきは44mmという圧倒的なサイズのオリジナルセクターダイヤルを搭載していることだ。
omega CK2039 movement
大型ムーブメントがケースいっぱいに収まっている様子も確認できる。
さらにこの時計には、当時のオメガでは非常に珍しいギルト仕上げの初期キャリバーが搭載されている。そしてこの時計は1939年にポーランドへ納品され、長年にわたり鉱山技師の手首に収まっていた。その後時計職人へと譲られ、現在の出品者である孫の代まで受け継がれてきた。
omega sector dial phillips
セクターダイヤルにはいくつかの染みや汚れがあるが、それでも十分に魅力的だ。
gilt omega movement
このムーブメントのギルト仕上げは非常に珍しい。
この時計の最大の魅力は、そのサイズと希少性にある。1930年代に44mm径の時計が製造されたこと自体が驚きだが、それ以上に引かれるのはオリジナリティと素晴らしいコンディションだ。ダイヤルは一切のリダンやクリーニングが施されておらず、ケースも手を加えられていないことが明らかである。そして75年の歴史のなかで3人のオーナーの手を渡り、そのうちのふたりが血縁者であり、すべてがポーランド国内で完結しているという背景も非常に興味深い。またこの時計が納品された1939年のポーランドと、アラスカ プロジェクトがNASAに届けられた1971年のアメリカ。このふたつの時代背景を比較してみると、まったく異なる世界が広がっていることに気づくだろう。