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オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル ホワイト

時計収集にはこんな格言がある。“スピードマスターの所有は通過儀礼である”。私はそれを念頭に早い段階で時計の世界に飛び込んだ。スピードマスターを所有することが “時計マニア”であるための必須条件であるならば、ヴィンテージスピードマスターの全リファレンスをひと目で見分けられるようになるべきだと思い込んだものだ。ラグの形状、“ドット・オーバー90”のタキメータースケール、フォント、エングレービング、表記、ダイヤルなど、あらゆることを学習したが、1週間後にはまたすぐに忘れてしまった。スピードマスターを購入する前に、私は燃え尽きてしまっていたが、私は気を取り直して前に進んだ。以来、私はスピードマスターの購入を真剣に考えたことはなかったが、最近になってふたつのオプションが私の心に刺さり始めた。

口コミ第1位のオメガスーパーコピー代引き専門店最初の候補は新作“エド・ホワイト”であった。これはヴィンテージのRef.105.003にインスパイアされたストレートラグを持つモデルで、Cal.321を搭載した初代スピードマスターの復刻版である。私はヴィンテージウォッチが大好きだが、取り扱いに気を使わず身につけるのは難しい。この新作には、そもそも私がヴィンテージスピードマスターに引かれた伝統をほうふつとさせる上、経年劣化の心配も少ない。

Ed White speedmaster
2020年、編集部は“A Week On The Wrist”でその“エド・ホワイト”復刻版のスピードマスターを取り上げた。

ダニエル・クレイグ、当時未発売だったホワイトダイヤルのスピードマスターを着用

2023年秋、ダニエル・クレイグがオメガのイベントのレッドカーペットを歩いたとき、彼のラウンドタイプのアイウェアに目を奪われなかったなら、彼の手首で輝くホワイトのスピーディに気づいたことだろう。

そして今年初め、オメガはおそらくここ数年で最も期待されたスピードマスター(あるいは、あらゆる“何とか”マスター)を発表した。2023年秋にニューヨークで開催されたイベントで、ダニエル・クレイグが当時まだ知られていなかったホワイトダイヤルのスピードマスターを着用しているところを目撃されたことも、この熱狂の炎に油を注いだ。この目撃情報は多くの憶測を呼んだ。スピーディファンにとって苦悩の数カ月後、2015年の45周年記念モデル“シルバー スヌーピー”以来となる、(ほぼ)完全なホワイトダイヤル仕様の新作スピードマスターが登場した。しかも限定モデルではないという。それこそが、オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル Ref.310.30.42.50.04.001である。長らく待ち侘びた甲斐があったというものだ。

Week on the Wrist
米国版のIntroducing記事には175以上のコメントが寄せられ、閲覧数は数十万ビューに達した。ほとんどの販売店ではすでに1年以上、もしかしたらもっと長いウェイティングリストになっているそうで、正規販売店の関係者ふたりが少なくともあと数カ月はこの記事を書かないでくれと冗談めかして懇願してきた。「もうこれ以上、この件で電話をかけてくる人は勘弁してほしいのです」

 実物を見かけたのは1度だけだった。私はこの新しい時計に興奮し、最初のスピードマスターとしてこの時計を手に入れたとしても、間違った決断だと後悔しないと思っていた。しかし、その後考え直した。結局のところ、スピーディがアイコンである理由のひとつは、ブラックダイヤルの美しさゆえなのだろうか? もしあなたがその結論に迷っていて、ホワイトラッカーダイヤルについてもっと知りたいと思うか、あるいはホワイトダイヤルのスピードマスターの歴史について知りたいなら、私たちに任せてほしい。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル Ref.310.30.42.50.04.001とは何か?
 最近の“A Week On The Wrist”のなかで、ベンはロレックス デイトナ ル・マンが発表されたとき、自分がどこにいたかを覚えていると語っていた。私もホワイトダイヤルのスピードマスターで同じ経験をした。というのも、私は普段、メーカーが新しいダイヤルカラーを発表するからといって関心を持つことはないからだ。だが、ジョン・メイヤーが自身が関わった新しいロイヤル オークをプレス向けにプレビューした直後、私はホテルで取材をまとめようとしていた。するとスピードマスターが発表され、私の朝の予定はすべて吹っ飛んだ。

 ホテルのロビーで割高なクラブサンドイッチを食べながら、オメガのプレスリリースや画像など、取材に必要な情報にアクセスできないことに気づいた。ダニエル・クレイグのチラ見せをじっくり見たわけでもなかったが、ここ数年で最も期待の寄せられたスピードマスターであることはすぐにわかった。この時計が私の胸をときめかせたのは、それらの問題を整理し、記事を書き始めてからだった。ホワイトかつスポーティで目を引くこの時計は、久しぶりに私の目を奪ったスピードマスターだったのだ。

White Speedmaster
 ここがおそらく最も非難を浴びるところだろうが、私がスピードマスター、少なくとも一般的なブラックダイヤルの“ムーンウォッチ”を買おうと思わなかった理由のひとつは、どれも似たように見えるからだ。月面着陸まで(そしてそれ以前まで)遡ることができるモデルの素晴らしい点、つまり非常に緩やかで思慮深い進化は、諸刃の剣でもあるのだ。

 数週間前、私は別々の日にスピーディプロを着用している人を見かけた。遠目には見分けがつかなかった。つまり、彼らがなぜスピーディーをつけているのか、その理由もよく分からなかった。私は誰かを見て、4桁、5桁、6桁リファレンスのロレックスを見て、彼らが時計コレクターなのか、一般的な消費者なのか、父親から引き継いだ4桁のロレックスを持つ20代の若者なのか、それともそれではないほかの何なのかを推測するのが好きだ。また、スピーディに関してめったにすることのない会話への扉を開くこともある。

White Speedmaster
 ホワイトダイヤルを採用したスピードマスターはこれまでにもいくつか存在した。そのうちのいくつかは追って紹介するとして、ステンレススティール製のホワイトダイヤルとしては初の通常生産(限定版ではない)の主力モデル(スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル)である。それ自体が信じられないだろう。オメガの正規販売店に立ち寄れば、“ホワイト・サイド・オブ・ザ・ムーン”から数種類の“スピードマスター レーシング”やその他の2カウンタークロノグラフまで、ホワイトダイヤルのスピードマスターを目にすることができる。しかしムーンウォッチは別格だ...アイコンであり、失敗が許されないモデルなのだ。2024年3月5日を、オメガがホワイトダイヤルでムーンウォッチを台無しにした残念な日とみなす人もいるだろう。しかしオメガがホワイトダイヤルを採用し、これほどまでに個性的な腕時計を生み出したという事実は、このラインナップに大きな新風を吹き込んだと言える。

Week on the wrist
Omega 3861
オメガ マスター クロノメーター認定コーアクシャルムーブメント、Cal.3861。

 2021年、オメガはSS製スピードマスター プロフェッショナルの最新世代を発表した。SS製にはふたつのオプションが存在し、ひとつは宇宙ミッションで使用されたスピードマスターと同じヘサライト(プラスチック)風防を備えたモデル、もうひとつは表(風防)と裏(ケースバック)にサファイアクリスタルを備えたサファイア“サンドイッチ”モデルで、内部の新型(現行世代)Cal.3861 コーアクシャルマスター クロノメーター手巻きムーブメントを眺めることができる。見栄えのいいムーブメントで、動作を眺めているだけで楽しくなり、量産品にしてはよく仕上がっている。Cal.3861の有名なコーアクシャル脱進機に加え、テンプはフリースプラング方式で、Si14シリコン製ヒゲゼンマイを採用し、1万5000ガウスまでの耐磁性も実現している。また、このムーブメントは50時間のパワーリザーブを備えている。手巻きのクロノグラフムーブメントは、少なくともデイト表示やカレンダーを気にする必要がなく、しばらく着用せずに置いておける場合には、常に私の最初の選択肢となり得る存在だ。そして、これほどアイコニックな系譜を持つものは少ない。

Omega 3861
Cal.3861をサファイアケースバック越しに眺める。

 このモデルはサファイア“サンドイッチ”のホワイトダイヤルバージョンで、直径42mm×厚み13.18mm、ラグからラグまでの長さは47.5mm、ラグはツイストされた形状を持つ。これは基本的にバズ・オルドリンが月面で着用した初代ムーンウォッチ(Ref.105.012)と同じ外寸で、50mの防水性を備えている。ダイヤルを拡大するヘサライトの歴史を感じさせる意匠はない。またケースバックの “ヒッポカムポス(海馬)”ロゴも、最新世代のために施された新しいエングレービングもない。その代わり、風防とケースバックには耐傷性の高いサファイアが採用されている。ケースバックの縁には、“CO-AXIAL MASTER CHRONOMETER”、“THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON(月面で着用された最初の時計)”と記されたエングレービングが施され、ダイヤルにはプリントではなくアプライドされた“オメガ”のロゴマークを配置。ベゼルはSS製、インサートはアルミニウム製で、タキメータースケールにはオリジナルモデルと同様に“ドット・オーバー90(D.O.N.)”の意匠が刻まれている。このD.O.N.ベゼルのようなディテールひとつ取っても、1本の時計がほかの時計とどこが違うのか、その些細な差異の研究に多くの時間を費やすスピードマスター愛好家にとって、天と地ほどの違いがあると言っても過言ではない。

Bracelet
新世代のスピードマスターには、より洗練されたブレスレットが採用されている。

 この世代におけるその他の改良点は、大規模なものからわずかなものまで多岐にわたる。日常の使用において最も大きな改良点は、20mmから15mmにテーパーがかかったブレスレットで、3分の1から3分の2のリンクが延長可能だ。以前のブレスレットに比べ、繊細さや脆弱性が軽減され、つけ心地もはるかによくなった。最初の数回は腕の毛が引っ張られることもあったが、やがてそれもなくなった。さらに微妙な変化として、1974年頃までスピードマスターのブラックニス仕上げのダイヤルにあった“ステップ(段差)”が復活したことだ。そう、その段差は新しいホワイトダイヤルにも残っていて、見た目はいいのだが、それが最初に目につくことはない。

Omega Speedmaster
 ダイヤルというひとつのデザインの要所を変更するというこの決断は、オメガがスピードマスターを歴史的にどのように発展させてきたかをよく表している。セラミック製ベゼルや新しいケースデザインのような大々的な変革は避け、この新作では1点のみしっかりと変更を加えている。ダイヤルには、“スピードマスター”表記とクロノグラフ針の先端にレッドが彩られている。これは購入者のあいだで少し賛否が分かれているが、私はこのアクセントが好きだ。また、ブラックPVDで覆われたブラックの表記、ダイヤモンドミラーポリッシュ仕上げのアプライドインデックスや針も際立っている。針とインデックスのスーパールミノバはホワイトで、グリーンに発光する。この1週間、私は時計をじっくりと眺め、手首から外し、各パーツを研究するのに多くの時間を費やした。しかし完成されたパッケージとしても、ぱっと見ただけで、ホワイトダイヤルの機能性は驚異的に素晴らしい。悪目立ちする要素はひとつもない。月並みな表現だが、この新しいダイヤルを眺めるたびに私から笑顔が溢れた。

White Speedmaster
Omega White Speedmaster
 プレスリリースによると、アポロ宇宙飛行士の白いNASAスーツと、1970年のアポロ13号以来、司令官の階級を強調するスーツの赤いラインからインスピレーションを得たということだ。どのプレスリリースも時計も、ストーリーテリングのために多少の辻褄合わせが行われるが、私は外観そのものもいいと感じている。オメガはほかの情報源にて、すべてのディテール(インダイヤルのサーキュラーグレイン仕上げなど)をはっきり見せながら、ホワイトラッカーダイヤルを製造するのは非常に複雑であり、それが当ブランドの生産を遅らせる元凶だと明かしているそうだ。それでもホワイトダイヤルの価格は従来のサファイア“サンドイッチ”よりも2万2000円高いだけの125万4000円(税込)だ。

Speedmaster
 スピードマスターがご無沙汰だった私のような者にとっては、少し高く感じるかもしれない。初期のスピードマスター、たとえばRef.145.022のような初期のスピードマスターなら、まずまずのコンディションの個体が半額程度で手に入るからだ。しかし、これはまったくの別物である。本作はオメガが現在取り組んでいるすべてを盛り込んだ最高級品なのだ。またスペック上では少し大きかったり厚かったりするように見えるかもしれないが、1週間以上着用している間、1度もそう感じたことはなかった。オメガが60年以上も前に、最初からほぼ完璧なものを完成させていたことを思うと信じられない思いだ。完全なパッケージとして、この時計は私の次の時計の新たな候補となった。もし手に入れることができれば、の話だが。

そのほかホワイトダイヤルを持つスピードマスターの数々
 ホワイトダイヤルのスピードマスターはムーンウォッチの通常のラインナップとしては目新しいかもしれないが、オメガにとっては決して新しいものではない。オメガ スピードマスターの歴史と宇宙開発との結びつきは、おそらく誰もが知るところだろう。NASAのジェミニ4号ミッションの一環として、アメリカ初の宇宙遊泳の際に着用されたこともある。その後、1969年7月20日のアポロ11号ミッションで、月面を歩いた宇宙飛行士が初めて着用した時計としても有名だ。

 これらの偉業に携わった時計は、現在のスピードマスターとほぼ同じ外観、特にブラックダイヤルであったが、月面着陸と同じ年に遡るホワイトダイヤルのスピードマスターの長い歴史もある。競合モデルとの比較に移る前に、ムーンウォッチのラインナップからほかのホワイトダイヤルモデルを見てみよう。歴史がお好きな方はシートベルトを締めて。現行品がお好みな読者は、読み飛ばしていただいて結構だ。私は恨んだりはしない。

アラスカ・プロジェクト
 1960年代後半、NASAのエンジニアであったジェームズ(ジム)・H・ラガン氏は、以前アポロ計画で時計やカメラのテスト手順に携わっており、将来の有人宇宙飛行で宇宙飛行士が使用する機器の仕様を開発していた。オメガは、コードネーム “アラスカ・プロジェクト”と名付けられた彼らの提案に取り組み始めた。プロジェクト名の “アラスカ”は、名前以外にアラスカ州とはほとんど関係がない。オメガは産業スパイによる被害を減らすため、多くのプロジェクトにコードネームを使用しており、このコードネームは1970年代まで使用された。その結果、最初のホワイトダイヤルのスピードマスターが誕生したのである。

Alaska Project Mark I
2017年の記事に登場した、極めて変則的な形状のチタンケースを備えたアラスカ・プロジェクトの初代プロトタイプ。

 耐衝撃性と高い耐温度性というふたつの目標をクリアするために、オメガがこれらの要求仕様に沿って完成させた最初のスピードマスターのプロトタイプが、1969年のチタン製アラスカ・プロジェクトである。オメガのCal.861をベースにしたムーブメントには、高温に耐えるために異なる素材とオイルが使用され、チタンケースは陽極酸化アルミニウム製の赤いアウターケースで保護されていた。さらに重要なのは、太陽光と熱を反射しやすくするためにシルバー/ホワイトのダイヤルを採用し、視認性を高めるためにスペースカプセル型のインダイヤル針を備えていたことである。

Alaska Project II
2016年のフィリップスにて、15万6250スイスフラン(当時の相場で約1724万円)で落札されたアラスカ・プロジェクトII。

Soyuz
Photo: courtesy Moon Watch Universe

 より伝統的なケースとマットな亜鉛メッキのホワイトダイヤルを備えたこの時計のセカンドバージョン“アラスカ・プロジェクトII”は、NASAのテスト用に製作されたが、NASAからは高価すぎるとして却下された。オメガがスピードマスターの改良を試みたのは、(依頼されずとも)これが最後ではなかった。しかし、この時計は最終的に1977年から1981年までソ連の宇宙飛行士の手首に装着され、宇宙へと旅立った。

“イタリアン・アルビノ”Ref. 3593.20.00
Speedmaster 3593.20.00
Photo: courtesy Roy and Sacha Davidoff

オメガ時計コピー 代金引換優良サイトがホワイトダイヤルのムーンウォッチを再び発表するのは、1997年、スピードマスター誕生40周年記念モデルとして、イタリア国内でのみ販売され、1年間に500本のみ生産された限定モデルが登場してからである。このモデル、Ref.3593.20.00は、“イタリアン・アルビノ”または“ビアンコ・イタリアーノ”として知られるようになった。

この時計のダイヤルは、純白ではなくクリーム色だ。メインインデックスはホワイトで、ブラックの囲みとブラックの文字、そして針はブラックにホワイトの夜光塗料を塗布している。この黒い囲みはダイヤルから浮き上がって見えるが、新型スピードマスターとはまた違った趣だ。このモデルは、サファイアケースバック越しに眺められることを念頭においたCal.1863を搭載した最初のスピードマスター ムーンウォッチのひとつである。つまり、これはRef.3573.50以前の初のサファイア“サンドイッチ”ムーンウォッチ(サファイア風防とケースバックを備えたモデル)ということになる。また、1997年に夜光塗料としてトリチウムが廃止されたあとは、ダイヤルマーカーと針にルミノバが採用されている。

日本限定の三越スピードマスターとアポロ11号35周年記念スピードマスター
2003年、オメガは日本最古の百貨店である三越とコラボレーションを行った。300本限定のこの“パンダ”スタイルのスピードマスター(Ref.3570.31)は、一種のカルト的人気を誇っている。実際、私がその昔、最も注目していたスピードマスターのひとつだった。三越限定モデルの相場が高騰してしまったため、アフターマーケットで似たようなダイヤルを自作する人さえ存在する。そのため、正しい個体を見つけるのはかなり困難となっている。