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ロレックスの“アルビノ”ダイヤルとは何なのか?

初のホワイトエクスプローラー 1016が今週オークションに出品される。極めてレアなこのヴィンテージロレックスの文字盤に隠された事実とフィクションを解説しよう。

目を閉じて、ロレックスのスポーツウォッチを思い浮かべてみてほしい。おそらく、いまあなたが考えている時計は黒文字盤である可能性が高い。ただしそれは必ずしもそうではない。ロレックスは今日私たちが知っているスポーツモデルのトリオ(エクスプローラー、GMTマスター、サブマリーナー)を、1953年から1955年にかけて初めて黒い文字盤を発表した瞬間から普及していった。しかしこれらのモデルの初期には白い“アルビノ”ダイヤルという希少種が存在している。

ロレックススーパーコピー 代引きアルビノとは、マニアの好奇心をくすぐるとんでもなくレアな文字盤である。50年代から60年代前半のサブマリーナー、GMTマスター、エクスプローラーを含めても、おそらく20~25本以下しか確認されていないほどだ。その希少性もさることながら、とにかく見た目がカッコいいのだ。私は最近このアルビノの文字盤が頭から離れない。

今週開催されるフィリップスのジュネーブ時計オークションに、アルビノダイヤルを持つエクスプローラー 1016が出品されるようだ。2007年以来では初となる主要なオークションに登場したアルビノ 1016である。これらの文字盤はコレクターのあいだで常に多くの疑問を生み出してきた。これは本物か? もし本物なら、その背景にはどんなストーリーがあるのだろうか? と。

ロレックスは自社の歴史的なモデルについて直接コメントをしないかもしれないが、姉妹ブランドのチューダーは今年、ブラックベイ GMTにホワイトダイヤル(厳密にはオパラインダイヤル)を投入し、購入者の興味の炎を煽った。ということで、今回はこのアルビノダイヤルが持つ魅力について迫っていこう。

決して白黒がつかないアルビノダイヤルとは何か
アルビノダイヤルを持つロレックス エクスプローラー 6610
アルビノダイヤルの初期型エクスプローラー 6610。

アルビノダイヤルを持つロレックス GMTマスター 6542
アルビノのGMTマスター 6542。

まず前提として、アルビノのGMTマスター、エクスプローラー、サブマリーナーとは何なのか? 総じて白くてシンプルなダイヤルを備えており、これらのモデルの初期の例に存在していたと言える。ここまでだと別に大したことはないように聞こえる。

ロレックスがエクスプローラー、サブマリーナー、GMTマスターを発表する以前の、50年代前半で台頭したスポーツウォッチに白やシルバーといった文字盤が用意されていることはそれほど珍しくはなかった。例えばエクスプローラーのインスピレーションとなったエドモンド・ヒラリー卿の持つエベレストロレックスは白文字盤だった。サブマリーナーの前身であるターノグラフの初期型もそうだったし、今はスミソニアンで眠っているが実際にマリアナ海溝の底まで旅をしたディープシー・スペシャル No.3も白文字盤だった。ロレックスのスポーツコレクションは、リファレンスやダイヤルバリエーションなど、そのすべてにおいてバラエティに富んでいる。同じリファレンスでも文字盤の上で優雅に輝く星があったり、エベレストに持っていけるほどの道具に見えたりと、とても不思議な時代だったのだ。

エドモンド・ヒラリー卿のロレックス
エドモンド・ヒラリー卿がエベレストに挑んだ際携行していたロレックスの時計。50年代前半、白文字盤のスポーツウォッチがいかに珍しかったかを物語っている。

50年代半ばにエクスプローラー、サブマリーナー、GMTマスターが登場すると、ロレックスはコレクションの統一化を図り始め、そのなかでもほとんどのスティール製スポーツウォッチには黒文字盤を採用することを決断している。しかしいくつかの奇妙な白文字盤が、ラインナップに紛れ込むという不思議な現象が起こった(なかには伝説の“アルビノ”デイトナもあり、これはエリック・クラプトンが一時期所有していたものを含めても4本しか確認できていない。ただしそれらは別物であり、ここでいうアルビノダイヤルとはまた似て非なるもののため別の機会に紹介しよう)。

これらのアルビノダイヤルはテスト用なのか、試作品なのか、ディスプレイ用のモデルなのか、あるいは要人への大切な贈り物だったのか、私たちは長いあいだ疑問を抱いていた。今日その全貌を知る術はないが、これらの込み入った説明はいずれも真実であるとは思えない。オッカムの剃刀(なにも複雑な仮定はいらない、結論は簡潔であるべきだという原則)を信じているなら、最もシンプルな説明が最適かもしれないだろう。そこでディーラーであり、Loupe Thisの共同設立者であるエリック・クー(Eric Ku)氏が自身の意見を述べてくれた。

アルビノダイヤルを持つロレックス GMTマスター 6542
「ロレックスはある意味、スイス系ドイツ人のような存在だと思っています」とクー氏は言う。「彼らが自ら作ったものがあれば、それを使おうとするのです」。時計職人が文字盤のスタンプや印刷パッドが正常に動作しているかどうかを確認する最も簡単な方法は、真っ白な文字盤に黒いインクでテストすることだと教えてくれた。クー氏やRolex Passion Reportのようなほかの人々は、ロレックスは印刷パッドが正常に動作していることを確認するべく、短期間製造をしていたのだと推測している。白文字盤を印刷したあとに、彼らはこれは使ってもいいのではないかと思い巡らせ、流通させたのだと。

「特にデイトナにおいては真のプロトタイプダイヤルを目にすることがあります」。こう語るのはWind Vintageのエリック・ウィンド(Eric Wind)氏だ。「しかしこれがテストダイヤルであるというのは納得がいきません」。もし本当にテストやプロトタイプなのであれば、6時位置にSuperlative Chronometer Official Certifiedという文字を入れてダイヤルを仕上げる理由がないからだ。クー氏もウィンド氏もこのアルビノダイヤルがきちんと“製造された”時計だったと認めている。

この時期のロレックスは時間をかけてギルト加工を施して文字を浮き彫りにした美しい黒文字盤を製造していたが、この白いアルビノダイヤルは黒インクでパッドプリント(平面を立体的に見せる印刷方法)しただけの大変シンプルなものだ。黒文字盤と比べるとまさにフラットなダイヤルといえる。だが見た目は素晴らしく、滅多に手に入らないほど希少で、ヴィンテージロレックスのなかで最も伝説的な時計に位置づけられる。

ホワイトアルビノダイヤルはスポーツモデルのなかでも、エクスプローラー 6610と1016、GMTマスター 6542と1675、サブマリーナー 6204/6205という初期リファレンスで発見されている。ケースの製造年数は50年代のものが多いが、なかには60年代前半のものも存在する。