昨年、Alliance of British Watch and Clock Makers(英国時計・時計職人協会)は、加盟するすべての時計ブランドや職人たちを通じてブリティッシュウォッチメイキングを紹介する初の展示会を開催した。そこには40を超える出展者が集い、来場者のみが購入可能な特別限定モデルが多数披露された。そして何より注目すべきは、アライアンスの会長であり、唯一無二の時計師ロジャー・スミス(Roger Smith)氏が、シリーズ1をイベントに提供し、非公開入札オークションに出品したことだ。その売上はアライアンスへの寄付として充てられ、最終的な落札額は“元の最低落札価格である29万5000ポンド(日本円で約5600万円)をはるかに超える”という表現にとどめられたが、その価値の高さは言うまでもない。
今年もまたBritish Watchmakers’ Dayが再び開催される。参加ブランドから25本以上のスペシャルエディションが発表され、2025年3月8日にロンドンのリンドリー・ホールを華やかに飾る。しかし、このイベントを今知った人にとって残念な知らせがある。協会の会員および一般向けのチケットはすでに完売しているのだ。ただし公式ウェブサイトによれば、キャンセルが発生した場合は一般向けに再販されるとのことだ。
出展ブランドやスペシャルエディションを手がけるメーカーは、スーパーコピー 代金引換を激安お客様に提供しますすべて英国を拠点としている。その多くは英国国内で組み立てられており、なかには今回のイベントを機に初めて自社製の時計を国内で製造するブランドもある。参加ブランドのほとんどはマイクロブランドと呼ばれる小規模メーカーであり、ムーブメントにはミヨタ、セリタ、セイコーインスツルメンツ製のキャリバーが多く採用されている。そして最後に、多くのブランド(いや、おそらく大半が)売上の一部を協会に還元する仕組みを取っている。
コンプリケーション
今年のスペシャルエディションの多くは複雑機構を搭載していないが、それも驚くことではない。しかし、英国時計界で名を馳せるふたつのマイクロブランド(もはやこの2社をそう呼ぶのは適切ではないかもしれない)が、それぞれの代表的なモデルをベースにした極少量生産の特別モデルを用意している。クリストファー・ウォードは、巨大なムーンフェイズディスクを備えた37mmアベンチュリンダイヤルの新作に、遊び心あふれるアレンジを加えている。このモデルでは、アベンチュリンダイヤルにユニオンジャックの輪郭をレーザーエッチングし、さらに写実的な大きな月の上に、同ブランドのシニアデザイナーであるウィル・ブラックフィールド(Will Brackfield)氏が手描きした宇宙飛行士のキャラクターを描いている。赤い秒針と、それにマッチしたストラップを備えた“クリストファー・ウォード C1 ムーンフェイズ ミッション・トゥ・メイデンヘッド”は25本限定で製作されるが、英国旗を大胆にオマージュしたデザインは、まさにストレートな英国愛を感じさせる。
CWard Mission to Maidenhead and Fears Brunswick Jump Hour
フィアーズ(Fears)は、最近話題のブランズウィック・ジャンピングアワー コンプリケーションで勢いに乗っている。このジャンピングアワーのモジュールを手がけたのは、クリストファー・ウォードだ(またお目にかかったね)。今回の特別仕様では、40.5mmの“エドワーディアンエディション”にロンドン・アッセイ・ホールマーク入りの鏡面仕上げが施されたソリッドスターリングシルバーケースと、ラッカー仕上げのホワイトダイヤルを採用している。
特筆すべきは、ジャンピングアワーにヴィンテージの懐中時計を思わせるセリフ体のフォントを採用したのは今回が初であること、そしてこの10本限定モデルのためにジャンピングアワーディスクが新たに製作されたということだ。価格は付加価値税込みで5450ポンド(日本円で約100万円)と決して安くはないが、フィアーズの卓越したコンプリケーションにふさわしい素晴らしいデザインであり、きっとすぐに完売することだろう。
ツールウォッチ
もし高級コンプリケーションが好みでないなら、幅広い価格帯で特別仕様のツールウォッチを展開するいくつかの英国マイクロブランドをおすすめしよう。英国旗のカラーテーマはここでも続き、アルキン(Alkin)はモデル スリー ダイバーズウォッチの特別エディションを発表している。ネイビーダイヤルに植字のアラビア数字を採用し、さりげなく赤のアクセントを加えたデザインとなっており、40本限定で展開される。ベルファストを拠点とするノマディック(Nomadic)は、フィオール 555 GMTを50本限定でリリース。おなじみの“ペプシ”カラーリングにホワイトダイヤルを組み合わせ、さらにイエローのGMT針を加えることでひと味違った個性を演出している。また、エリオット・ブラウン(Elliot Brown)もホルトン GMTにユニオンジャックを感じさせるアレンジを加えているが、今回はこの10本限定モデルに初めてサテン仕上げを施し、さらに統一感のあるサテン仕上げのスティールブレスレットを組み合わせた。そして最後に、夫婦で立ち上げたゴルビー・ウォッチズ(Golby Watches)が新たにコースタルコレクションを発表。25本限定の特別モデルがイベント会場で直接購入可能となっており、通常モデルはクラウドファンディングを通じて展開予定だ。
以下のギャラリーで、今回の特別モデルをチェックしてみて欲しい。
もしBritish Watchmakers’ Dayで手に入れるダイバーズウォッチが、青・赤・白といった英国旗カラーを前面に押し出していないものがいいなら、マーロー(Marloe)が用意している。同ブランドのモラー 310は、100本限定で英国で組み立てられたモデルで、ツールウォッチのなかでも特に個性的なケースデザインを持つ。このモデルの鮮やかなイエローとライトブルーのカラーリングは、スウェーデンとスカイ島の国旗に由来している。どちらもブランドの共同創業者にとって特別な意味を持つ場所だという。一方、ヴァーテックス(Vertex)は英国から離れたテーマで、バカンス気分へシフト。M60 タオルミーナは、シチリア島をイメージした鮮やかなブルーカラーをまとい、50本限定のシリアルナンバー入りモデルとして登場する。
ダイバーズウォッチだけでなく、フィールドウォッチもいくつか登場している。なかでもお気に入りは、エディンバラのクレメンス(Clemence)が手がけるムンロ(下の写真)の特別仕様だ。ダイヤルをすっきりとさせ、ゴールドアクセントを加えた限定10本のモデルである。革新的ではないが、その抑えたデザインがかえって魅力的に映る。ゲコタ(Geckota)は、クッションケースのパイオニアに、縦方向のサテン仕上げを施したラピスブルーフュメダイヤルを採用。6時位置にはゴールドのユニオンジャックをプリントし、英国らしさを演出している。イベント後に50本限定でオンライン販売予定だ。オモロガート(Omologato)はアーナージ GMTを10本限定で製作。ベル&ロス風のスクエアケースに、スネイル仕上げを施したチェリーレッドのセクターダイヤルを組み合わせた個性的なモデルだ。
Clemence Special Piece
クレメンス ムンロ
Geckota
ゲコタ パイオニア
Monro
モンロー アドベンチャー ダイバー、抽選販売モデル
一方、このイベントで唯一購入できないモデルがモンロー(Monro)のアドベンチャーだ。今回も赤・白・青のカラースキームをまとったユニークなダイバーズウォッチである。このモデルは販売されるのではなく、イベント会場で抽選をし当選者に贈られる。つまり、ある意味では今回のイベントで最も“安い”時計ということになるのかもしれない。
クラシック
ここからは、タフなツールウォッチとは一線を画し日常使いに適したモデルの紹介だ(とはいえ、それが理由でペラゴスをオフィスでつけるのをやめるわけじゃない)。このカテゴリーの勝者は、ファーラー(Farer)のオーロラだ。36mmケースのシンプルな3針モデルで、美しいコッパーギヨシェ風ダイヤルに加え、ブラックのオーバープリントが施された夜光インデックスを採用している。夜光のブロック状の数字にアウトラインを加えたデザインは、これまで見たことがないユニークな仕上げだ。生産数はわずか10本と少ないが、幸運にも後日、シリアルナンバーなしの追加90本が発売予定である。
以下のギャラリーで、この特別モデルをチェックしてみて欲しい。
ダックワース・プレステックスは、ヴィンテージデザインの魅力を存分に取り入れたプレステックス No.2を25本限定で発表。クッションケースにエナメルダイヤルの懐中時計を思わせるデザインを組み合わせつつ、手に取りやすい価格帯に落とし込んでいる。“一体型ブレスレット”アイコンをほうふつとさせる1本を探しているなら、オリヴィエ・メイラン(Olivier Meylan)が英国で初めて組み立てるPESも注目の時計だ。ダイヤルにはユニオンジャックが施され、わずか5本限定で展開される。ポンピーク(Pompeak)は、オープンハートのジェントルメンズ・クラシックにギヨシェ仕上げのレッドフュメダイヤルを採用し、15本限定でリリース。シデレウス(Sidereus)はゴードン ベネットモデルの3針ウォッチを5本限定で製作する。ダイヤルにはブリティッシュ・レーシング・グリーンとオレンジのアクセントを取り入れ、英国の時計製造への敬意を表すとともに、ブランドのアイルランドのルーツを思わせるデザインに仕上げている。ピニオン(Pinion)は赤と青をミックスし、個性的なライトパープルのスタンプギヨシェダイヤルを採用。ニュートロンバイオレットとして、38mmケースの30本限定モデルを展開する予定だ。
ワイルドカード枠
ここからは、デザイン性を前面に押し出したユニークなモデルを紹介しよう。こうしたショーにふさわしい、アート性の高い時計たちだ。ミスター ジョーンズ・ウォッチズ(Mr Jones Watches)ほど、時計に興味のない友人たちを引きつけたブランドはないかもしれない。遊び心あふれるデザインとアーティストとのコラボレーションで、独自の時間の読み方を提案するブランドとして知られている。今回のBritish Watchmakers’ Dayに合わせ、ロンドンを拠点とする同ブランドは新たな特別モデルを発表。ブライトン在住のアーティスト、ミスター・フィル(Mister Phil)氏とのコラボレーションモデルカオシファイに、初めて機械式ムーブメント(セリタ SW200)を搭載したバージョンが登場した。10本限定の少量生産で、それぞれにマルチカラーのステッチを施したハンドメイドのレザーストラップが付属する。
Mr Jones Watches Khaosify Mechanical
ミスター ジョーンズ・ウォッチズ カオシファイ
アイソトープ・ウォッチズ(Isotope Watches)は、これまでのスペースエイジデザインとは一線を画し、今回はよりクラシックなアートの技法にフォーカスしたモデルを発表。ユニオンジャックを描いたダイヤルをストローマルケトリ(藁象嵌)とクロワゾネ・エナメルのふたつの手法で製作し、それぞれ5本ずつの計10本限定で展開する。ストローマルケトリダイヤルは、職人ベルナルド・ド・オレイ(Bernardo d'Orey)氏による作品で、藁を割って染色し、パターン状に組み上げることでひとつひとつ異なる表情を持つダイヤルが完成する。一方クロワゾネ・エナメルのダイヤルは北京のマスターエナメラーが手がけ、アウトラインを作成して何度も焼成を重ねることで生み出される精巧な仕上がりとなっている。全10本は、ド・オレイ氏が製作したストローマルケトリの特製ボックスに収められる。
手仕事といえば、ボーケン(Bōken)は今回のショーで少し変わった試みをしている。同ブランドはダイヤルアーティストとして知られるクリス・アレクサンダー(Chris Alexander)氏とタッグを組み、British Watchmakers’ Dayの会場で、3本の時計にライブペインティングを施す。ブランドによればデザインは英国へのオマージュとなるようだが、最終的な仕上がりは当日まで誰にもわからない。一方スコフィールド・ウォッチカンパニー(Schofield Watch Company)はまったく異なるアプローチを取る。アーティストのベン・グッフィー(Ben Guffee)氏と協力し、B6ダイバーズウォッチのブロンズケースモデルを40本製作。そのうちグリーンとブルーが各20本ずつとなっており、まるで海底から引き揚げられたかのような風合いにパティーナ加工されている。自分の好みとは違うが、こうした荒々しい個性を求める来場者には確実に刺さるモデルだろう。
Beaucroft Penfold Collaboration
ボークロフト×ペンフォールド
今回のショーで最も美しいダイヤルのひとつが、ボークロフト(Beaucroft)とペンフォールド(Penfold)のコラボレーションモデルとして登場する。75本限定で製造され、ブリストルを拠点とするアーティスト、ティム・グレシャム(Tim Gresham)氏とタッグを組み、英国のコンテンポラリーアートにオマージュを捧げた立体的なダイヤルを採用している。シンプルながらも奥行きがあり、日常使いしつつデザインのストーリー性も楽しみたい人にぴったりだ。
今回のショーで最も実験的なモデルといえるのが、アピアのジェン 1.Bだ。5本限定で製作され、赤くてまるで蜘蛛の巣のようなダイヤルが特徴的だ。しかし、この時計を特別なものにしているのはケースの構造にある。ブランドによれば、強度と重量のバランスを最適化するためにジェネレーティブ・デザイン技術を採用し、従来のCNC加工では実現困難な独特のケース形状を生み出したという。製造には金属3Dプリンティングを採用。時計業界ではまだ発展途上の技術ではあるものの、革新性のある試みであることは間違いない。
Gimlet Wrist Shot
スタジオ・アンダードッグ×フィアーズによるギムレットが、私の今回のベストモデルに選ばれた。
Lume Shot Gimlet
Side Shot Gimlet
おめでとう、ここまででほぼ全モデルを紹介し終えた。 しかし最後に最高の1本を残しておいた。このコレクションのなかで、発表以来これほどまでにインターネット上で話題を集めた時計はほかにない。もし自分がロンドンのショーに行けるなら、間違いなく手に入れたいモデルでもある。そう、スタジオ・アンダードッグ×フィアーズのコラボレーションウォッチ、ギムレットだ。一見すると、このふたつのブランドはこれ以上ないほど対照的に思える。だがフィアーズのクラシックな38mmのブランズウィックケースと、スタジオ・アンダードッグのモダンでアイコニックなダイヤルデザインを融合させたことで、その対比が見事に生かされている。今回のダイヤルは、ホワイトからペールグリーンへと美しくグラデーションするスーパールミノバのシェードを採用。さらにスタジオ・アンダードッグのデザインに欠かせないアイコニックなサファイアディスクが、2本のビスでダイヤル上に浮かぶように固定されている。仕上げとして、ストラップは英国を拠点とするストラップテーラーが手がけ、全体のテーマをしっかりと継承している。
いや、本当にこれはカッコいい。 オーデマピゲ スーパーコピー代金引換おそらく両ブランドもそれを自覚しているだろう。ギムレットは、3月に迫るBritish Watchmakers’ Dayにて200本限定販売される予定だが、正直なところ、その場で即完売するとにらんでいる。とはいえ、ほんのわずかでも売れ残ることを願う自分もいる。せめてあとでもこの手で掴むチャンスがあるように。まあ、夢くらい見させてくれ。
最後に
さて、すべての発表モデルを見終えた。 British Watchmakers’ Dayに合わせたスペシャルエディションとして、驚くほど多彩なデザインや仕上げがそろっていた。正直なところ、このリストを掘り下げるまでは、これほど多くのマイクロブランドが英国から生まれているとは知らなかった。もちろんブリティッシュウォッチメイキングに真の意味で深く関わっているブランドもあれば、単に英国を拠点としているだけのブランドもある。それでも、これだけの多様性を持つイベントが開催されるというのは、英国時計界が今まさに盛り上がりを見せている証拠だろう。すべての時計が傑作とは限らないが、数百ポンドから数千ポンドまで幅広い価格帯のモデルが揃っているため、誰にとっても魅力的な時計が見つかるイベントになるだろう。冒頭でも触れたように、このイベントへの需要の高さは非常に心強い。チケットはすでに完売しているが、英国在住の読者はキャンセル待ちリストに登録しておくのがおすすめだ。枠が空けば、運よく参加できるかもしれない。